糖尿病の治療
治療の目的
深刻な合併症を予防するためです。
糖尿病はほとんど自覚症状がない病気ですが、糖尿病神経障害・糖尿病網膜症・糖尿病腎症を初めとする三大合併症の予防、また動脈硬化をはじめとする心血管イベント、認知症、骨粗鬆症といった様々な病気を発症するリスクを高める危険性のある病気です。自覚症状がないからといって、治療しないでいると深刻な症状を引き起こすため、定期的な治療が必要不可欠です。
治療経過
コントロール結果によって治療方針を変更します。
糖尿病治療の基本は、食事運動療法になります。
食事運動療法で血糖コントロールが上手くいかない場合、薬物療法を併用します。それでもうまくいかない場合、インスリンを皮下に注射するインスリン療法に移行することになります。
食事・運動療法
治療の基本です。カロリー計算しながらの食事や、定期的な運動プログラムを作成し血糖コントロールを測ります。
薬物療法
糖分を吸収しずらくする薬や、糖分を排出する薬、インスリンの効き目を高める薬等あります。
インスリン療法
インスリンを皮下に注入します。定期的に自己注射する必要があります。
食事療法
食事療法の目的
糖尿病治療の基本です。
糖尿病治療の基本は食事療法です。糖尿病治療には運動療法・薬物療法・インスリン療法など様々な治療方法がありますが、食事療法をおざなりにしていると、効果が出ないばかりか、いつまでたっても良くなりません。また、2型糖尿病の患者さんは肥満が原因で発症することが多く、根本的な食生活を見直すことが治療の本質でもあります。
肥満と糖尿病の関係
肥満状態は糖尿病を悪化させます。
肥満は糖尿病の原因因子になります。肥満状態になると、インスリンの働きを阻害する物質が分泌され、インスリンの働きが悪くなります。それに対して膵臓より血液中に大量にインスリンが分泌されることにより、インスリンの効き目弱くなるとともに、膵臓が疲弊しインスリンの分泌自体が少なくなってしまいます。
カロリー計算について
自分に適したカロリーを知りましょう。
自分に本来適正なカロリーは性別や年齢、身長などによって異なります。自分に適したカロリー量を知り、そこから逸脱しないように計算して食事をとる必要があります。
1.7x1.7x22=63.58kg
63.58×25=1600
一日の適正カロリーは1,600kcalとなります
食事のタイミング
規則正しく食べることが重要です。
食事のタイミング、量のバランスによっても血糖値の上がり方は異なります。毎日3食規則正しく、毎日一定の時間に食事をとるようにしましょう。
朝食は抜かず、夜遅くに食べると太りやすいので夜食はしないようにしましょう。
間食はしてもいいですが、総カロリーに含まれることに注意してください。
夜に大量に食べるなど、1食ごとの食事量に大きな差があると血糖をコントロールしにくくなります。
栄養バランスの取れた食事にしましょう
3大栄養素をまんべんなく取る必要があります。
3大栄養素とは炭水化物、タンパク質、脂質の3つです。この3つの割合は管理栄養士や医師の指導によって異なります。どれか一つに偏ることのないように気を付ける必要があります。また、野菜は一日350g(両てのひら1杯分)を目安に摂取しましょう。
海藻・きのこ類は総カロリーに含みません。
運動療法
運動療法の目的
運動すると血糖値が下がります。
運動をすると筋肉の中のグリコーゲンが減少して血液中のブドウ糖を消費するので、血糖値が下がります。普段運動不足な人ほど、運動療法をすることで効果が高くでる傾向があります。
また、運動療法により体重が下がると、肥満細胞によるインスリンの働きを阻害する物質が分泌されることを防ぐので、相乗効果で血糖値が下がる効果が期待できます。
運動療法はダイレクトに血糖を下げます。
運動の種類
有酸素運動が基本です。
運動療法では、激しい筋力トレーニングよりもジョギングのような有酸素運動が有効とされています。いきなり激しい運動をすることは身体に負担がかかりますし、途中で運動療法をリタイアする原因にもなりますので、普段の運動量にあった運動を選択してください。
有酸素運動
ジョギング、マラソン、水泳などがあります。消費エネルギーに換算すると160~240kcalの消費が望ましいとされています。
レジスタンス運動(筋肉トレーニング)
ダンベル等を使った筋力トレーニングです。こちらは筋肉量を増やすことにより代謝を上げ、糖をより消費しやすくする効果があります。
運動の強度
無理のない範囲で長く続けられることを重視しましょう。
一般的に週に3回程度、一回160~240kcal消費することが理想です。運動のタイミングとしては食後2時間以内が血糖の上昇を抑える為理想とされていますが、あくまで継続して運動する習慣をつけることを意識するようにしてください。
運動療法の注意点
運動療法をしてはいけない人がいます。
運動療法は正しく行えば血糖値の改善と、身体の健康に結びつく有効な治療法ですが、誤ったやり方で行うと、身体を痛めたりする原因にもなります。
しかし、糖尿病が進んで糖尿病網膜症や動脈硬化が進んだ患者さんの場合は運動を行うことでかえって症状を悪化させる可能性があります。
既にいくつかの合併症を有する患者さんは運動をしていいか主治医に確認する必要があります。
薬物療法
治療の目的
食事・運動療法も継続して行いましょう。
食事・運動療法で血糖コントロールが上手くいかない場合、薬物療法を併用する必要があります。
薬を飲んでいればいいという訳ではなく、あくまで治療の基本は食事運動療法ということを念頭に置きましょう。
様々な作用の薬があり、飲み方も薬によって異なります。患者さんの状態に合わせて医師が選択します。
基本的には軽度の場合は内服薬、重度の場合は注射剤を選択することになります。
内服薬
メカニズム | 薬剤の種類 | 効果 |
---|---|---|
インスリンの分泌を促す | DPP4阻害薬 ・ネシーナ ・テネリア ・ジャヌビア ・エクア ・トラゼンタ ・ザファテックなど | インスリン分泌に関係しているインクレチンというホルモンは、DPP-4という酵素によって分解されます。DPP4阻害薬はDPP4の働きを抑え、インクレチンが分解されにくくします。 |
スルフォニル尿素薬(SU薬) ・オイグルコン ・アマリールなど | インスリンはすい臓から分泌されますが、このすい臓にあるSU受容体という部分を刺激することでインスリンの分泌を促す薬剤です。 |
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グリニド薬 ・グルファスト ・スターシスなど | 上と同様にSU受容体を刺激しますが、より効果の発現が早いタイプの薬剤です。 |
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食後の血糖上昇を抑える | α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI薬) ・グルコバイ ・ベイスンなど | 糖は「炭水化物→二糖類→ブドウ糖」の順番で分解されます。この二糖類からブドウ糖はαグルコシダーゼという酵素が分解しますが、この酵素の働きを抑えることでブドウ糖の生成を抑える薬剤です。 |
インスリンの働きをよくする | ビグアナイド薬(BG薬) メトホルミンなど | ビグアナイド系薬は肝臓に作用し、糖が新たに作られる機構を抑えます。また、筋肉での糖の取り込みを促進させます。血液中の糖が筋肉の中へ入るため、これによってもHbA1cなどの血糖値を下げることができる薬剤です。 |
チアゾリジン薬 (インスリン抵抗性改善薬) アクトスなど | 脂肪細胞は肥大化するとインスリンの働きを悪くする物質を放出するようになります。肥満患者で糖尿病リスクが高まる理由の一つとして、この脂肪細胞の肥大化によってインスリン抵抗性が増大することがあります。脂肪細胞を小さい脂肪細胞に分解することで、インスリンの抵抗性を下げることができる薬剤です。 |
|
血糖を体外に排出する | SGLT2阻害薬 ・スーグラ ・カナグル ・フォシーガ ・ルセフィなど | 通常尿中に排泄された糖は尿管にてSGLT2という酵素によって再吸収されています。このSGLT2の働きを抑えることによって、尿からの糖の再吸収を抑えそのまま体外に排出する薬剤です。 |
内服薬(配合薬)
2つの薬剤が組み合わさった配合剤があります。
糖尿病薬の中には2つの成分を組み合わせた薬剤があります。
2つの薬剤を1つにすることで飲む薬の種類を減らすことができます。
薬剤名 | 配合内容 | 効果の組み合わせ |
---|---|---|
ソニアス | アクトス+アマリール | インスリンの働きをよくする + インスリンの分泌を促す |
メタクト | アクトス+メトホルミン | インスリンの働きをよくする + インスリンの働きをよくする |
グルベス | グルファスト+ベイスン | インスリンの分泌を促す + 食後の血糖上昇を抑える |
リオベル | ネシーナ+アクトス | インスリンの分泌を促す + インスリンの働きをよくする |
エクメット | エクア+メトホルミン | インスリンの分泌を促す + インスリンの働きをよくする |
イニシンク | ネシーナ+メトホルミン | インスリンの分泌を促す + インスリンの働きをよくする |
注射剤(インスリン以外)
強いインスリン分泌効果があります。
食事が合図となって分泌されるホルモンとして、GLP-1という物質が知られています。GLP-1は別名でインクレチンと呼ばれることもあります。そして、このGLP-1はインスリン分泌を促す作用があります。
しかし、GLP-1は体内ですぐに分解されてしまうため、薬として利用するには効果が不十分です。そこで、GLP-1の構造に変化を加えることで、「GLP-1としての作用を有しながらも、体内で分解されにくい物質」を創出することができれば、効率よくインスリン分泌を促すことができるようになります。
インスリン
インスリンの治療目的
内服薬でコントロールできない方が対象です。
もともとインスリンが分泌できない1型糖尿病の患者さんや。2型糖尿病の悪化が進んだ方は
インスリンを皮下に注入するインスリン療法を開始することになります。インスリンは定期的に補充する必要があるため、患者さんは自分で注射する必要があります。とはいえ、最近は膵機能温存のため早めにインスリン治療を開始することも多くなっています。
2型糖尿病の方はインスリンの分泌が回復した場合、あるいはインスリンの効き目が改善した場合、インスリン療法をやめることができます。
自己注射用のペン型のインスリン製剤を使用します。製剤・病状にもよって回数は異なりますが、1日数回自己注射することもあります。
インスリンの打ち方
皮下注射します。
インスリン製剤は皮下に注射します。
筋肉注射する薬剤と異なり、痛みはそれほど感じません。先生に指示された量(単位)だけ打つようにしましょう。
基本的にはおなかの部分に打つことが多いですが、二の腕、太ももにもうつことができます。注射は毎回2㎝ぐらいずつ位置をずらすようにし、ピンポイントで同じ位置に注射するのは避けるようにしてください。
インスリン製剤の種類
効果の発現スピードによって分類されます。
インスリンの分泌には、常に分泌される基礎分泌と、食事をとった後に分泌される追加分泌の2種類があります。患者さんの病態によってどのインスリン製剤を使用するか医師が決定します。
インスリン製剤の 取り扱い注意点
インスリンはデリケートな製品です。
インスリン製剤はデリケートな製剤であり、温度管理が求められます。また、針を使用する都合上、針の使いまわしや、他人に貸すなどの行為をすると感染症の原因になります。
注意点
・高温になる場所に放置しない
・凍結させない
・同じ針を使用しない
・他人が使用した針に触らない
・使用期限に注意する
・使用しない場合は冷蔵庫にて保管する
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